恋は花火とともに6
詩織さんとの4回目のデート。映画終わりに食事をしていると、彼女は急に真剣な顔つきで、「今後に向けて話しておきたいことがあります」と言ってきた。
内容は衝撃的だった。
彼女によると、数年前に疾患により大きな手術をしたとのこと。そして、もしかすると再発するかもしれないという内容だった。
ここまま二人の関係をさらに発展させて順調に進めればと思っていただけにショックは大きい。
聞いた途端、目の前が真っ暗になった。
お先真っ暗とはこういう事を言うのだろう。そんな事実を抱えていたとは。
確かに、彼女は可愛くて、愛嬌がたっぷりで、頭も良いので、一般生活でも出会いがありそうな感じはしていた。しかし、これまで会ってきた方々にも綺麗な人はいたので、このような理由を抱えているとは思わなかった。
むしろ、今まで会った人の中では、ものすごくしっくりきたので、出会えたのは運命だと思っていた。
そうか、こういう事実があったのか・・・
彼女もこのような状況になってしまい、辛いに違いない。そして、今の段階でこの事実を伝えてくれるということは、彼女も自分に対して本気になりかけているのだろう。
本気で考えてくれるのは嬉しい。後は、自分がこの事実を受け入れられるかどうかにかかっている。
テレビドラマや映画では主人公はこの事態を受け入れて、彼女と手と手を取り合って生きていく方がドラマチックな展開を見せることが多い。
しかし、現実ではどうだろうか。
人間は30を越えれば、体のどこかで何かしらのガタは来る。彼女が患った病は自分にだっていつか起こる可能性はある。
このまま再発しなければ問題はない。しかしながら、再発してしまったとき、縁起でもないけど、彼女がもし先に亡くなってしまったときに、自分は耐えられるのか。
もし、そのときに子供がいたらシングルファーザーとして育てないといけない。また、彼女の病気を詳しく聞いてないから分からないが、遺伝性がある場合は子供も発症するリスクがある。
自分にはそれを背負っていける覚悟があるのだろうか?
自分にこの事を問いながら帰路を急いだ。
恋は花火とともに5
詩織さんとの3回目の花火デートは無事終わった。
実は次回の約束も帰り際にできたので感触としては大丈夫だと思う。帰り道が混雑していたこともあり、手を握ることもできた(//∇//)(中学生か!?)
次に会うのは翌週の週末。今度は映画に行くことになったので、観る映画をいくつか探してみた。
アクションもの、コメディー、恋愛などいろいろなジャンルがある。いっそのこと、恋愛系かなと考えてはみたが、婚活中の男女が見るのは露骨すぎるような感じがしたので、邦画でストーリーが充実しているものを選んだ。
今回の待ち合わせは、都内の繁華街。
休日ということもあり、街は人でごった返している。
実は今回の待ち合わせ場所は初回と同じところだった。そこで待っていると、初回のシーンを思い出してほくそ笑んでしまう。
初回のシーンはこちら
しばらくすると、待ち合わせ時間に合わせて詩織さんがやって来た。
本日は夏仕様の服装でスカートを着ていて可愛らしい(女性のファッションに対する語彙力がなくて表現できません・・・)
軽く挨拶を交わしてから、本日観る予定の映画館へと足を進めた。
映画館はお互いに無言になってしまうけど、その人らしさが出る空間でもあると思う。映画中に飲食をするか、しないか、エンドロールが始まったら出る準備をするのか、終わるまで動かないか。こういうところが合った方が相性が良さそうな気がする。
映画を楽しんだ後に、今回はフレンチ系のお酒が飲めるお店に入った。
しばらく二人で映画の感想や、近況などを話していると、詩織さんが急に真剣な顔つきで「今後に向けて話しておきたいことがあります」と言ってきた。
恋は花火とともに4
詩織さんとの3回目は花火デート。
待ち合わせ場所に向かうと彼女は浴衣姿だった。
詩織さんの着飾った浴衣姿を見て、彼女の本気度を感じた。そして、男として応えないといけないと心の中で思った。
周りの人たちは一斉に花火会場の海岸の方へ向かって歩いている。その流れの中で、二人だけ沈黙の時間が流れた。
「浴衣で来るなんて言ってなかったから驚いた」と言うと、彼女は、はにかんだ笑顔を返してくれた。
僕らも花火の見える場所を探すべく海岸の方へ向かった。
周りは山のような人でごった返している。浴衣で早くは動きにくい彼女を先導する形で、場所を探すために人混みの中を掻き分けて進んで行った。
花火が見えそうな場所を数カ所巡り、最終的には打ち上げ場所からは少し遠いが、よく見える場所を確保した。
しばらくすると、夏の夜空に花火が打ち上がり、大きな花を咲かせた。
女性と花火を見る機会が、これまでほとんど無かったので、この時間とこの空間を過ごせることが嬉しかったし、なおかつ、その相手が詩織さんという事実が嬉しくてたまらなかった。
1時間ほどして花火が終わると、周りの人々が帰るために一斉に動き出した。
僕らも遅れを取らないように、その流れに乗るべく歩き始める。この人混みの中ではぐれないように、詩織さんの手をしっかりと握った。
恋は花火とともに3
詩織さんとの3回目は花火デートに行くことになった。
相談した結果、翌週の土曜日に有名な花火大会が開催されるので、それに行くことになった。
その週は嬉しすぎて仕事の辛さも吹き飛ぶぐらいに自分のテンションが高かった。
そして、花火大会当日の土曜日。
待ち合わせ時間に合わせて夕方に家から出発した。今回は花火会場を歩き回るので、動きやすい格好にしようと思い、デニムにTシャツ、スニーカーで行くことにした。
電車に乗って会場へ向かって行くと、徐々に乗車してくる人が増えてきた。女性は浴衣を着ている人が多いので、おそらく同じ花火を見に行くのだろう。花火への期待を乗せながら電車は進んで行った。
詩織さんとの待ち合わせは、花火大会の会場の駅だった。駅で降りると、想像以上に人がたくさんいる。さすがに全国でも有数な花火大会だ。
詩織さんからは既にメールで到着している連絡と場所が書いてあった。それに従って進んで行くと、その場所もたくさんの人が待ち合わせをしている。
「この中から見つけられるだろうか」と少し心配になりながら、どこにいるかをメールで聞くと、あるお店の横にいると返事があった。
そのお店の付近へ向かったが、なかなか見つけられない。キョロキョロと周りを見回していると、不意に声をかけられた。
この声は詩織さんだ。
声の方向に振り向くと、なんと詩織さんは薄紫の浴衣を着て、髪をいつもよりもアレンジした髪型で、その場に立っていた。
浴衣姿の彼女は、これまでに会った時とイメージが違い清楚な雰囲気をまとっていた。
彼女は本気だ。
そう悟った瞬間だった。
恋は花火とともに2
詩織さんとのセカンドコンタクト。
今回のために洋服も買い、お店を予約して臨んだ。
「なんとかして次回へ繋げる」
これが、今回の詩織さんとのデートの目標だ。次につながらなければ意味がない。
婚活はある意味、常に刹那的である。その場でお相手と自分が次へ進もうと思わない限りは、その時点で縁は切れる。継続するには、男女が一緒に縁を紡いでいかないといけない。
詩織さんとの待ち合わせは、都内のターミナル駅だった。待ち合わせ時間より少し早くついたので、メールで居場所を伝える。即座にメールの返信があり、同じ場所にいると書いてある。
辺りを見回すと、少し離れたところに詩織さんはいた。女性のファッションには詳しくないのであまりわからないが、服装が似合っていて可愛い。この人とデートが出来るのだなと思うと、改めてテンションが高くなった。
自分から近寄って行くと、詩織さんも気がついたらしく、笑顔で迎えてくれた。この笑顔の時点で既に幸せ感で一杯だ。
予約したお店は駅から5分ほど歩いた大型ビルの1階にあった。オープン形式でテラスでも食事ができるおしゃれな感じのお店だ。お店に入り、店員に名前を告げると、奥の席へ案内された。
料理はイタリアン系の一品料理と各種お酒が用意されてあった。メニューを詩織さんと一緒に見ながら選んで注文する。
その後、料理とお酒を堪能しつつ、お互いの近況や家族のこと、仕事についてなどを話した。お互いに兄弟もいて育った環境は近そうだ。
今回も初回に続いて、話は途切れることがなく感触が良い。この状態のまま、次の約束をしてしてしまおうと思い、今度、どこかに出かけないかと切り出した。
言った瞬間、どのような反応を見せるかが心配だったが、詩織さんは即座に「うん」とOKの返事を返してくれた。
「よかったー」心の中で一気に不安要素が除かれた瞬間だった。次回に繋げることができた。
その後、二人でどこに行くかを相談した。
丁度、梅雨明けした直後なので、どこかの花火を見に行こうという話になった。
彼女(まだ彼女じゃないけど)と花火デート。憧れるシチュエーションだ。
恋は花火とともに1
今回は詩織さんとの話。ファーストコンタクトで詩織さんと交際が成立した。
詩織さんとは話も盛り上がったし、すべてにおいて自分好みである。この関係を途切れさせてはいけないと思い、交際成立を確認すると、即座にメールを送った。
メールを送ると、直ぐに詩織さんから返信が来た。感触は悪くない。そのままの流れで、次回の約束をすることができた。約束できたことに、心は浮かれまくった。
コンシェルジュからはアドバイスとして「デートの時はレストランを予約するなどして、特別感を出した方が良い」と言われた。そのため、本気モードの今回はおしゃれなお店を予約することにした。
ベタではあるが、ネットで「レストラン、デート、おしゃれ」で検索してお店を絞り込む。
検索をすると、イタリアンやフレンチのおしゃれなお店が並んでいた。
初めてのデートでフルコースに行ったらドン引きされると思うので、金額的にはそこそこで、ある程度カジュアルで、なおかつ、おしゃれなお店を選んで予約した。お店選びはバッチリだ(だと思う)
2回目ということで、前回のスーツよりはカジュアルに、ただし、カジュアル過ぎないような服装にしないといけない。
試行錯誤の結果、夏用のカジュアルシャツを購入した。これとチノパンを組み合わせれば少しは小綺麗に見えるだろう。
こんな風に準備を整えながら、デートの当日を迎えた。