恋は花火とともに4
詩織さんとの3回目は花火デート。
待ち合わせ場所に向かうと彼女は浴衣姿だった。
詩織さんの着飾った浴衣姿を見て、彼女の本気度を感じた。そして、男として応えないといけないと心の中で思った。
周りの人たちは一斉に花火会場の海岸の方へ向かって歩いている。その流れの中で、二人だけ沈黙の時間が流れた。
「浴衣で来るなんて言ってなかったから驚いた」と言うと、彼女は、はにかんだ笑顔を返してくれた。
僕らも花火の見える場所を探すべく海岸の方へ向かった。
周りは山のような人でごった返している。浴衣で早くは動きにくい彼女を先導する形で、場所を探すために人混みの中を掻き分けて進んで行った。
花火が見えそうな場所を数カ所巡り、最終的には打ち上げ場所からは少し遠いが、よく見える場所を確保した。
しばらくすると、夏の夜空に花火が打ち上がり、大きな花を咲かせた。
女性と花火を見る機会が、これまでほとんど無かったので、この時間とこの空間を過ごせることが嬉しかったし、なおかつ、その相手が詩織さんという事実が嬉しくてたまらなかった。
1時間ほどして花火が終わると、周りの人々が帰るために一斉に動き出した。
僕らも遅れを取らないように、その流れに乗るべく歩き始める。この人混みの中ではぐれないように、詩織さんの手をしっかりと握った。